サムエル下12章1~12節 「〇〇ファーストもセカンドも無い世界」

ヴェロネーゼ作「水浴するバテシバ」 説教
ヴェロネーゼ作「水浴するバテシバ」

サムエル下12章1~12節 「〇〇ファーストもセカンドも無い世界」

本日は平和聖日です。テキストを見るとヒッタイト人ウリヤを殺したことを預言者ナタンは繰り返し非難します。「ヘト」とは世界史でも学ぶヒッタイト帝国のことであり、製鉄技術や戦車戦術で知られる古代帝国で、紀元前1200年ごろつまり、このダビデのお話の100年ほど前に謎の滅亡を迎えます。主なる神様はなぜ、イスラエル人ではなくて、この亡国「ヘト人」ウリヤを殺したことことを惜しむのでしょうか?最近、アメリカファーストだとか都民ファーストだとか、日本人ファーストだとか内輪の人を第一とし序列化する標語が目立っています。序列二位、三位とされた、マイノリティー、移民、外国人は不良分子なのでしょうか?

ハワイのホノルル国際空港の正式名称はダニエル・K・イノウエ国際空港といいます。井上ケンという日系人の名前が冠されています。彼は故人ですが、長らくハワイ州選出の連邦上院議員を半世紀ほどつとめ上院仮議長(米国の序列3位)、大統領自由勲章叙勲まで昇りつめた人でした。 彼は第二次世界中442連隊戦闘団に従軍し右腕を失いました。同戦闘団は日系人で組織され、もっとも勇敢で米国史上最も多くの勲章を得た部隊として知られ、実に最近まで事実をひた隠しにされていましたが、ナチスドイツのダッハウ強制収容所を開放したのもこの部隊でした。なぜそこまで勇敢に戦ったのか?その日系米国人たちの愛国心が人一倍強かったからです。でも、何一倍愛国心が強かったのか?そこに差別があったからです。米国人以上に米国人らしさとは何かということに悩み、ことあるごとに普段二等国民扱いをされて差別されたからこそ「お前たちは米国人ではない」と後ろ指を指されないようにするために人一倍米国人らしく振舞うことに務めたのです。

ヘト人ウリヤが帰還命令を受けたときに、妻バテシバの所に帰りたい気持ちを押さえて戦友たちを思って王宮の入口に留まって寝た(サム下11:8~11)のは、ヘト人ウリヤがイスラエル人以上にイスラエル人らしくあろうとした、健気な愛国心があったからです。神がダビデをとがめたのもその健気な忠義心を逆手に取って完全犯罪を遂行したからです。少数者が、弱者が多数派におもねろうとして必死にマジョリティー以上にらしさを追及して人知れず努力する…そこに涙ぐましい努力があることを3000年前の書物であるにも関わらず、聖書は驚くべき程クリアさをもって、その気持ちに焦点をあて語っています。神は小さき者、声なき弱者の神なのです。

 

そして、イエス様はそんな差別のない世界を実現するためにこの世にいらっしゃったのです。

そこではもはや、ユダヤ人もギリシア人もなく、奴隷も自由な身分の者もなく、男も女もありません。あなたがたは皆、キリスト・イエスにおいて一つだからです。ガラテヤ3章28節

※サムネイルはヴェロネーゼ作『水浴するバテシバ』

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