ヨハネの福音書6章1~15節「パンと魚の奇跡の教会見聞録」

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ヨハネの福音書6章1~15節「パンと魚の奇跡の教会見聞録」

先週の説教で、イエス様は「キリストを自称しているのではない」と申しあげました。そうではくて、

  • 父なる神ご自身が、
  • バプテスマのヨハネが、
  • イエスを通じて行われる奇跡が、
  • モーセの律法(旧約聖書)が、

「ナザレのイエスこそ、繰り返し預言されてきたメシア(キリスト)であることを指し示しているのだ」と主張されたのです。イエスを通じ行われる奇跡がイエスがキリストであることを示すとはいったいどういうことなのでしょうか?一例を挙げます。

本日の招きのことば(列王記下4章42~44節)

一人の男がバアル・シャリシャから初物のパン、大麦パン二十個と新しい穀物を袋に入れて神の人のもとに持って来た。神の人は、「人々に与えて食べさせなさい」と命じたが、 召し使いは、「どうしてこれを百人の人々に分け与えることができましょう」と答えた。エリシャは再び命じた。「人々に与えて食べさせなさい。主は言われる。『彼らは食べきれずに残す。』」召し使いがそれを配ったところ、主の言葉のとおり彼らは食べきれずに残した。

「エリシャの百人の給食」を聞いて、私たちクリスチャンの多くは「キリストの五千人の給食と似ているなぁ」とを感じることでしょう。しかし、エリシャは紀元前9世紀の預言者で時系列順で言えば、「百人の給食」の奇跡が先です。五千人の給食がその800年以上前の百人の奇跡に似ているのであり、しかも、後から起こった奇跡が元祖である「百人の給食」の規模が50倍以上であり、まさに元祖を超えて本家を名乗りだしたようなものなのです。百人の奇跡を行ったエリシャは旧約聖書最大の預言者とされるエリヤと比肩するほどの大予言者です。その預言者の起こした奇跡を何十倍もすごい奇跡をイエスがなさったということは、奇跡自身が、モーセを主著者とする旧約聖書自身がナザレのイエスこそキリストだと雄弁に証言していることの証左となるのです。

 カトリックや東方正教会は聖書以外に「聖伝」を大事にします。「聖伝」とは聖なる伝承の事で多くは口伝でありました。口づたえの伝承は皆さん伝言ゲームをしたことがあればお分かりいただけると思いますが、途中で話が盛られたり大きく食い違ったりします。そういったこともあって、プロテスタント教会は「聖書のみ」を掲げて聖書以外の伝承に権威を認めないのであります。しかし、今日はあえてその聖伝に言及してみましょう。

今も、イスラエルの北部にあるタブハという地にはパンと魚の奇跡の教会(Church of Multiplication of the Loaves and the Fishes)という教会が建っています。現在の教会堂は1982年にカトリックのベネディクト会によって建立されたものですが、最初の教会は聖伝にもとづきビザンツ帝国時代の350年ごろに正教会がたてられたものです。614年にペルシャに破壊され、19世紀にパレスチナが欧州列強の支配下になり、考古学調査によって1300年ぶりに当時の教会の遺構が発見され、現在の教会の床のモザイク画も一部は当時の教会のものを使っています。そして、そもそも西暦350年に教会をたてのは、キリスト教の弾圧が解かれ、国教化した東ローマ帝国が伝承から5000人の給食のあった地を同定しその岩の上に教会をたてたのです。(奇跡をみた。パンを食べたという関係者が少なくとも5000人はいるわけでだから、当該出来事が起こった場所の特定は比較的容易だったと思われます)

サムネイルはパンと魚の奇跡の教会の内陣、聖餐卓の下に露出した岩が奇跡のあった場所とされている。

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