マルコの福音書12章13~17節「信教の自由と政教分離」

説教

マルコの福音書12章13~17節「信教の自由と政教分離」

昨日は建国記念の日、戦前は紀元節と呼ばれた日でした。これは1873年に神道の日本書紀に基づく祝日として、制定されました。戦後、政教分離原則に反するものとして、1948年に廃止されたのですが、1968年に再び「建国記念の日」として祝日法と政令で定められました。これを戦前回帰、逆コースと見なした日本のキリスト教界は以来、2月11日を「信教の自由を守る日」として、その大切さを覚える日としています。もとい、「政教分離」は信教の自由を守るための制度的保障なのですが、某カルト宗教の一件以来巷ではこの用語が全く逆の用語で使われてしまっています。

今日の聖句マルコによる福音書12章でもイエス様が、「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい」とおっしゃっているように、たとえ、主イエスが霊的でこの世のことわりを超越した「教え」を語っていたとしても、現に信者の群れである教団はこの世に根を下ろし、社会経済活動をする以上は世俗とかかわりを持たざるえません。その霊的なことと世俗のこととの峻別が難しいためイエス様も腐心されている様子が描かれています。

本日もうひとつ暗証聖句として挙げた聖句には

心の中でキリストを主とあがめなさい。あなたがたの抱いている希望について説明を要求する人には、いつでも弁明できるように備えていなさい。 16それも、穏やかに、敬意をもって、正しい良心で、弁明するようにしなさい。そうすれば、キリストに結ばれたあなたがたの善い生活をののしる者たちは、悪口を言ったことで恥じ入るようになるのです。

                      ペテロの手紙 第一 3章15~16 

とあります。聖句に掲げられた通り、日本に住むキリスト者として、政教分離について正しく弁明し、これからも日本で信教の自由が守られるように願うものです。

まず、第一に政教分離とは信教の自由を守るための政治サイドに課せられた義務であって宗教サイドに課せられた義務ではありません。

当該カルト宗教が政界に食指を伸ばし政界が汚染されたので、政教分離は政界がかような宗教団体とかかわらないこと、また宗教界が政界に影響力を行使しないように律することを「政教分離」と誤解されています。

第二に政治の「政」という字は「まつりごと」とよむように元来宗教と不可分な関係です。民法における一夫一婦制にしても戦没者の遺骨の収集の促進にしてもそこには為政者の宗教観、倫理観をもとに政策が遂行されるもので政治から宗教の完全な排除等本来できないものなのです。欧州の民主主義国家にキリスト教民主主義の政党があるように、また現在の日本の政権与党内にも、宗教政党が存在しているように、憲法の定める政教分離原則は、宗教が政治に関与することの一切を否定するものではありません。政教分離は英語でSeparation of Church and State といい、宗教そのものではなくて分離の対象は直訳すれば教会、つまり宗教団体(講社)をさします。

第三にこの語におけるStateは国や地方自治体の統治機構のことであり、漢字一事で表すなら「政」よりも「官」とした方がより正しい訳でしょう。独占的な裁定や許認可権限をもつ「官」が「講」に対して、優遇政策「アメ」も弾圧「ムチ」も行えないように一切の介入を禁ずることで曖昧模糊としている信教の自由を外側から守ろうとしているのであって、政教分離とは「官講介入禁止則」と言い換えた方がよいほどのものなのです。

問題とし、また被害者救済の視点からフォローすべきは「カルト2世」であるのに、宗教2世とよび、宗教全般が危険であるかのように印象操作をし、たとえば、厚生労働省が先日

未成年者の同意ないままに保護者が宗教行事に参加をさせることは虐待にあたる

などと宗教の在り方を国家が規定し指針を示すことこそ実は政教分離に反するのです。このような規定をだせば、和装に着替えさせようとしてこどもがグズれば、七五三でも虐待になってしまいますし、キリスト教の献児式も厚労省の規定違反になってしまいますし、秋田のなまはげにいたっては「悪い子はいないか?!」といって大人が怖い格好をして子どもを泣かし怖がらせることそのものが習俗となっているのですから完全にアウトになってしまいます。「官」がカルトを抑制することを大義として結果としてカルト以外のすべての宗教団体「講」に「こんな教義はダメだ」と注文を付けることこそ実は政教分離原則違反であり、結果として「無神論」「無宗教」という思想集団「講」を優遇することにもなりかねないのです。

サムネイルは自身がカトリック教徒であるがために国家として苛烈なプロテスタント弾圧を行った血染めのメアリーことメアリー一世の肖像画

 

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