チ。原作1話を神学してみた。キリスト教と自然科学の親和性

サブカルを神学してみた

※サムネイルは神童ラファウに地動説を説く異端者フベルト
アニメ一話より Ⓒ魚豊/小学館/チ。―地球の運動について―製作委員会

チ。原作1話を神学してみた。キリスト教と自然科学の親和性

今、NHK総合の深夜アニメ枠で放送されている「チ。地球の運動について」を本物のキリスト教の牧師でわる私が神学(考察)してみようと思います。

物語の舞台は15世紀の欧州のP国でC教という宗教が支配的なフィクションの世界です。フィクションであると断っていますが、P国とは後に地動説を広めた天文学者コペルニクスを輩出したポーランド王国の事であり、C教とは言わずもがなキリスト教の事です。

そして、地動説が発見、世に広まる過程で、暗愚なC教徒がそれを迫害してきたという事実と逆の物語が描かれてしまっています。

実はこのマンガの作者の魚豊先生も実際はキリスト教は地動説にそれほど反対していないことを分かっているし、ウィキペディアをみれば2025年2月22日現在、

現代の日本では、ガリレオ裁判などの印象が強いためか、「中世ヨーロッパでは地動説を唱える者へのキリスト教による激しい迫害・弾圧があった」と信じられていることが多いが、魚豊が「史実ではどうやら、地動説ってそこまで迫害を受けてはいなかったらしい」と語ったように、必ずしも地動説を支持した人の全員が処刑されたわけではない。

と書かれています。だから、クリスチャンである私が目くじら立てて応答すること自体がこの作品に術中にはまってしまったことになりかねず、C教徒が偏狭であることの証左とされてしまうのかもしれません。しかし、視聴者の全てがウィキペディアを見るわけではないし、天下の公共放送NHKが放送しているのだからといって鵜呑みにする人もいるでしょう。

数か月前にある国政政党の党首がフィクションだと断ったうえで、「30歳を超えたら子宮摘出」などと極めて女性差別的な発言をし、最終的に謝罪に追い込まれました。そう、いくらフィクションだと言っても言っていいことといけないことがあります。それに日本のキリスト教会が無反応過ぎるのも、本作を全肯定してしまっているようで、また日本のキリスト教界自体が浮世離れし過ぎているようで良くないと思っています。敢えてこの作品と作者の意図に釣られてみようと思うのです。

本来は、キリスト教と自然科学というのは凄く相性がいいのです。皆さん高校でならったであろうメンデルの法則で有名なメンデルは修道院の修道士でしたし、今回のテーマの天文学である。ガリレオもニュートンもケプラーも熱心な有神論者、クリスチャンでした。

自然科学の大発展はむしろ、西洋キリスト教世界で花開いたのです。

例えば、日本では車は左側通行、お隣韓国は右側通行、イギリスは左側通行だけどポーランドは右側通行・・・これはそれぞれの領域を治める支配者が違うので交通ルールも違またそれぞれ違います。いってみれば、こちらの村はこちらの村の道祖神、あちらの村はあちらの村にゆかりのある氏神様…多神教の世界では神様ごとに担当と支配領域があります。しかし、この世界がたった一人の神によって形作られたならどうでしょうか?世界を支配する物理法則も一つであり、そう、日本でもポーランドでも韓国でもイギリスでも同じ万有引力の法則が働きます。そして、その法則は単純明快で美しく、その法則に支配された世界も美しく調和の取れたものです。こうした考え方は、極めてキリスト教的なものなのです。

奇しくもチ。の第一話で異端者であるフベルトが神学生のたまごであるラファウ少年を諭したセリフこそ、キリスト教の異端的な考え方ではなくて、オーソドックスなキリスト教の考え方なのです。

最初は、チ。地球の運動についての論考を数ページで終わらせようとおもっていたのですが、作者の魚豊さんのキリスト教の考証は牧師の私から見ても一部は異端と正統が物語の都合上間逆になっているものもありますが、その多くはむしろ正しく、深いものもあり、むしろ原作の話数にしたがってまかりなりにもキリスト教の専門家(牧師)である私が神学(考察)していった方が、チ。のファンにとっても面白いしキリスト教にとっても興味を持ってもらえると思い、これから毎日2ヶ月ほどかけて毎日一話ずつ、全話考察していこうと思います。完走できるよう、応援ください。

 

コメント

  1. 風間隆志 より:

    恥ずかしながら、“実際はキリスト教は地動説にそれほど反対していなかった”とは、知りませんでした!

    でも、私のような認識の視聴者も多いかもしれませんね。

    リアル牧師による、チ。の考察、楽しみに読ませて頂きます♪

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